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道路運送法第十四条の運送の順序について

道路運送法第十四条の運送の順序について

道路運送法第十四条の運送の順序について

道路運送法第十四条には、次のように規定されています。

「一般旅客自動車運送事業者は、運送の申込みを受けた順序により、旅客の運送をしなければならない。ただし、急病人を運送する場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。」

この条文だけを見ると、貸切バス事業においても運送の申込みを受けた順序で運送をしなければならないのではないか、と考えてしまいます。実際、法令試験でもそのような前提で出題されることがあります。

しかし、ここに注意が必要です。

この条文の直前にある道路運送法第十三条を確認してみましょう。第十三条では、次のように定められています。

「一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。」

ここで注目すべき点は、「一般貸切旅客自動車運送事業者を除く」という括弧書きです。さらに「次条において同じ」との記載があります。これは、第十四条においても、一般貸切旅客自動車運送事業は適用されないことを意味しています。

つまり、貸切バスは運送の申込みを受けた順序で旅客を運送する必要がないということです。

実際のところ、貸切バスの利用形態を考えてみれば明らかです。貸切バスをご利用になる場合、通常は事前に運送契約を結ぶわけです。先に契約を結んだお客様の旅行日が、後から契約されたお客様の日程より後になることは珍しくありません。このような現実に照らせば、第十四条の順序規定が貸切バスに適用されないことは、きわめて合理的な定めと言えるでしょう。

しかし、貸切バス事業者向けの法令試験では、この点が曖昧なまま出題されることがあります。

関東運輸局試験問題

上記は令和7年3月に関東運輸局で実施された試験の問題と解答例ですが、この問題文は貸切バス事業者について書かれています。にもかかわらず、そもそも貸切バス事業には適用されない第十四条について問われているのです。

確かに、第十四条の条文から括弧内に「申込み」が入ることは読み取れます。しかし、自らの事業に関係のない法規について試験で問われるのは、戸惑わざるを得ません。

法令についての知識がある貸切バス事業者ほど、「解答に『申込み』が入ることは理解できるが、そもそも自分たちには関係ない規定ではないか。なぜ関係のない内容を試験に出すのだろうか」と感じるのは自然なことです。

一方、近畿運輸局の法令試験では、別の工夫が見られます。

近畿運輸局試験問題

ご覧のように、「一般旅客自動車運送事業者は」と、一般的な条文の内容として出題されています。この出題方法であれば、受験者は納得しやすいでしょう。

ただし、ここでも疑問が残ります。貸切バス事業者に対する法令試験において、もともと自分たちの事業に適用されない規定を問うことは、本来の目的に照らして妥当なのでしょうか。むしろ、第十三条によって貸切バスがこの規定から除外されていることこそを問うほうが、真の知識確認につながるのではないでしょうか。

皆様のご意見をお聞かせいただきたく存じます。